宮2を夢見て~シンとチェギョンの物語~
韓国ドラマ「宮」に魅せられて未だ「宮2」をあきらめられず、あれこれ妄想しています。
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進め! 41
執務室にお馴染みの顔が3つ。
何やら真剣に頭を突き合わせている。

深呼吸するシン、怪しげなおまじないを唱えるチェギョン。
その2人をしっかりと観察中のユル。

「さあ、用意はいいか?」

シンが2人を促す。

「ちょっと、待った!
ねえ、負けたら行くんだよね?」

ユルが確認をする。

「当たり前じゃない。
何で勝った人が行くのよ?
ユル君が行きたいなら、わざわざこんなことをしなくても済むわ。
どうぞ、どうぞ。」

「いや、そういう訳では・・・
チェギョンこそ、最近顔を出していないから どうぞ。」

「私は子育てが忙しくて、そこまで手が回らないの。
んとに、明日に限って予定が空いてたなんて・・・
しかも3人ともってね。」

「つべこべ言わずに、さあ始めるぞ。
2人とも往生際が悪い!」

シンは冷たくいい放つ。


3人はぐるりと輪になって、真顔になった。

「ジャンケン、ポン!!」

グー・チョキ・パー、見事におあいこ。

「あいこでしょ!!」

チョキとグーが二つ。

「ヤッターーー!!
だから、最初からシンくんが行けばよかったのにィ~。」

「だよね、王族会重鎮ご夫妻の50回目の結婚記念日祝いには
やっぱりシンが自ら行くべきなんだよ。」

「お前らな、よく聞け。
明日は3ヶ月ぶりの完全休日だったんだぞ。
それが、この一瞬でおじゃんだ。」

シンの情けない顔は敢えて見ないようにして、
でも、2人は面倒な事が避けられて、うれしさを隠しきれない。

あ~あ・・・

シンは大げさにため息をつくが、誰も代わってくれないのは百も承知だ。


その時、チェギョンのポケットから着信音が流れてきた。

「ちょっと、失礼。」

チェギョンは相手を確認すると、バタバタと出ていった。




「でしょ?
そんな感じがしたのよ。
彼女は、身体全体で何かを発信してた。
私のアンテナがしっかりキャッチしたってことね。」

チェギョンの得意げな声がドアの向こうから聞こえてくる。


ポケットに手を突っ込んで、慌しく出て行ったけど
そんな大声で話すのなら、あまり意味はない。
お相手はおそらく、チェギョンが今心からの信頼を寄せている女性記者だろう。


執務室の中で、シンとユルは聞き耳を立てる。


「なるほどね。
まずは、どこかの医大でちゃんと単位を取らないとダメって事?
本当に一からやり直しなのね。
彼女は韓国政府が認めているくらい優秀な医師なのに。
法律がある以上、仕方がないわ。
うーん、直接宮は関われないし 
特別な奨学金で通える大学を探さないといけない。
ねえ、医大に知り合いはいないの?」

チェギョンはまるで友達のように話している。

「いつも偉そうなことばかり言ってるくせに
医者の友達くらい作っておきなさいよ。
私? 私はご存じの通りおバカちゃんだから
そんな賢い友達はいないわ。」

あははは・・・
チェギョンの楽しそうな声が聞こえてくる。



「ねえ、女性記者とチェギョンはずいぶん親しいみたいだね。」

ユルは感じた通りを口にした。

「ああ。
まるで、古くからの友達みたいに話しているな。」

「僕達が知らない友達なんだろうか?」

「いや、あいつは何でも開けっ広げだから
そんな友達がいたら、僕は知っているはずだ。」

シンはきっぱり言い切った。


「それはそうと、ユニさんだっけ?
彼女は相当優秀な医師のようだね。
韓国政府も存在を持て余しているのではなく
時期を待っているような感じを受けるけど。」

ユルの言葉にシンもうなずく。

「南北の現状勢から、表だって動く事を躊躇しているのだろう。
だが、逆にチャンスだと思わないか?
南も北も、今はユニさんに関わっている場合じゃない。
北の工作員だって、もう彼女の周りをうろついているとは思えないし。
こんな時期だからこそ、ひっそりと静かに勉強ができ
数年経てば、どこかの医局で働く事も可能だ。
そう、思わないか?」

「そうだね。
むしろ、今!なのかも。」

「だけど、宮は関われない。
しかも、滅多な人には頼めない。
そこでだ、色々な人を思い描いてみたのだけど
実は・・・僕達はすごい適任者を知っている。」

シンはユルの顔を覘くように言った。

「ヘミョンヌナ!!」

「ああ、現役の医大生で今はもう一般人だ。
女性の自立には関心が高く、すぐに飛びつくに決まっている。」

「なるほど、適任だよね。」

すると、ユルはイタズラっぽい目をして ドアを開けた。

「チェギョーン。」

電話中のチェギョンは、ビクッとしてふり向く。

「な、なーに?
今、電話中なんだけど。」

「電話の向こうの記者さんにも聞いてもらいたいんだ。」

ユルは少し大きな声を出した。
チェギョンの顔がこわばる。

「シンとも話したんだけど、ヘミョンヌナに頼んだらどうかなって。
一般人の医大生で、女性の自立に関心が高い。
どう? 適任でしょ?」

「なーるほど・・・いいかも。」

チェギョンはうなずく。

「聞いてた?
本当に、またとない適任者かもしれない。」

電話に向き直ると、チェギョンは明るい声で言った。


「チェギョーン!
記者さんとヌナが直接会って話してもらったらいいじゃないのか?
その方が話が早い。」

執務室の中から、シンの声がした。

「ア、アンデ!
それは絶対にできないわ。」

チェギョンの狼狽ぶりは尋常ではない。
近くにいるユルが首をかしげる。

「私達が、最後までちゃんとやるの。
2人でやれる。
ね、そうでしょ?」

電話の向こうの声は聞こえないが、彼女は即座に肯定したようだ。


「ま、とにかく。
そういう事だから、私に任せてちょうだいね。」

電話を耳にあてたまま、アタフタと歩き去るチェギョン。


「何か、におうね。」

執務室を覗きこんで、ユルが言う。

「ああ。
女性記者を調べてみる必要があるな。」

シンは腕を組んで、眉をひそめた。






      皆様へ。

    ご無沙汰しております。
    元気にお過ごしでしょうか?

    いつの間にか、空が高くなり
    蝉の声から、虫の音へ。
    季節は急速に秋へと走り出しました。

    9/9 娘が無事出産!
    3日間の陣痛の末、自然分娩で男の子が産まれました。
    クタクタに疲れ果てているはずなのに
    娘は我が子を愛おしそうに見つめ、すっかりお母さん。
    そちらに感動して泣いてしまった親バカな私でございます。

    しかし、そんな大事なベビーちゃんは 母親と共に退院できず
    ICUに検査入院してしまいました。
    お乳を戻して泣き続けた夜があっての処置です。
    戻すといっても、ほんの少しをペッという感じで
    昭和の母は、赤ちゃんはまだ母乳飲むのは初心者なんだから
    当たり前って思ったのですのが。
    うちの兄ちゃんの方が激しくゲボゲボ吐いてたわよ・・・

    脳波・心臓・血液検査を経て、最終的には腸の検査。
    で、異常無し。
    母親から遅れること一週間、無事退院してきました。
    めでたし、めでたし。

    いや、これからが本番!
    実家の母としては、婿殿の食事のお世話もするので
    ばーばではなく、ばーやになっております。

    そんなわけで、またノロノロしてしまうと思いますが
    ウリシンチェの事、忘れないでね~♪

    皆さまにまたお会いできる日を楽しみに頑張ります!

    お元気で、あんにょーん♥


                      Luna





進め! 40
夏の夕暮れは、騒々しい。

帰宅途中の親子連れや、仕事帰りの人達でにぎわう道端で
ユニを待ち伏せするジミンは確かに怪しくて。
途中に公園があり、その繁みに隠れて待ったこともあるが
あちこちをやぶ蚊に刺されて断念した。

刑事じゃないのだから、張り込みが上手くできるはずもない。
仕方がないから、ジミンは薬局で購入した防虫スプレーを噴射し
子供達がいなくなった公園の繁みで待機した。

   今日こそは、何としてでも。

皇后様からのプレッシャーは相当なものだ。


待つ事30分。
いつもより少し遅れて、ユニと同僚が向こうから歩いてくる。

   ああ、また2人だわ。
   どうしようか・・・
   正攻法でいくしかないかな。
   でも・・・

やはり躊躇ってしまう。
拒否られたら、そこで終わり。
これ以上の有効な策は思い浮かばない。

と、その時。
トン、トンと肩を叩かれた。

驚いて振り向くと、後ろから伸びた人指し指がジミンのほっぺにツン。

「えっ!」

そこに居たのは、よーく知っている顔。
真ん丸な瞳がじっと見つめている。

「何やってるのよ。
さっさと行きなさいよ~。」

ジミンをドンと押す。

「あなた様こそ、こんなところで何を」

「それはいいから、ほらっ、早く行く!
私があのお姉さんを引き付けておくわ。」

言うが早いか、チェギョンは繁みを飛び出して行った。



「あらー、今お帰りですか~?
お疲れ様です。」

突然話しかけられた施設職員2人は、警戒して後ずさりした。
目を凝らすと、韓国中の誰もが知る可愛い瞳が笑っている。

「こ、皇后様!」

施設職員が叫ぶ。

「しっ! 今日はお忍びなのよ。
知っている方を見かけたものだから、つい。
せっかくだから、ちょっとそこでお話しましょう。
ここしばらく施設に行けなくて、気になっている事があるの。
子供達に約束したことなんだけどね~。
お時間はいい?」

「はい、大丈夫です。
あ、ユニさん、 先に帰っていて。」

「ええ、わかりました。」


チェギョンはちらっとふり向いて、ジミンに目配せする。

ジミンは慌てて、繁みを飛び出した。





ジミンが公園に戻った時、もう日はとっぷりと暮れて
チェギョンの姿は跡形もなかった。

ジミンは誰もいなくなった公園のベンチに腰を下ろす。
そして、先程の会話をゆっくりと思い出してみた。


ユニの賢そうな瞳と、強い意思を感じられる口調。
一つ一つの言葉を慎重に選んで話していたが
彼女の言葉は力強かった。

最後に彼女はジミンをまっすぐ見て、はっきり言ったのだ。

「私はコ・ユンソンさんのようになりたい。
ですから、どうぞあなたのお力を貸して下さい。」

ジミンはその言葉を聞いて、覚悟を決めた。
とことん彼女に付き合おう!
どんなに困難な道であろうと共に進もうと。


コ・ユンソン氏。
韓国で初めて誕生した脱北者出身の外科専門医だ。

北朝鮮で医師だった脱北者のうち韓国の医師免許を取得した人は10人ほどいる。
が、外科専門医になった人はコさんが初となる。

コさんは北朝鮮の平城医科大を卒業後に医師となり、
5年間周辺地域で結核患者を診療した。

北朝鮮脱出後、2007年に中国・大連から韓国入りしたコさんは
韓国の医師免許を取得するため2年間、勉強漬けの日々を送った。
2010年に念願の医師免許を取得。
同病院で4年にわたる研修医生活を経て、晴れて専門医試験にも合格した。

コさんは医師国家試験を準備しながら
韓国と北朝鮮の医療システムに大きな格差があることを実感する。

最も大きな問題はラテン語の医学用語を使う北朝鮮と異なり、
韓国は英語の用語を使うため実務的なコミュニケーションが難しい。
幸いコさんは指導教授や同僚の助けもあってそれを克服することができた。

韓国の若い医師が避ける外科専門医の道を歩もうとする理由も明確だった。
医療環境が劣悪な北朝鮮では医師の専攻を内科と外科の二つだけに分かれる。
外科医の数が絶対的に不足しており、
1人の外科医が外科分野全般の診療を行わなければならない。
そのため、コさんは韓国に来てからも外科医になる夢を持ち続けてきた。

コさんは外科を中心に、医療従事者だった脱北者を
再教育したいという目標を持っている。
脱北者の中には、北朝鮮で医師だった人達もいるが
そのほとんどが医師として活躍できていない現状だ。

北朝鮮でいくら優秀な医師であっても、
韓国の医師免許を取得しなければ医療行為はできない。
それは、医学生からやり直すという事を意味する。
多くの時間を費やし、相当な努力を要すると同時に
日々の生活が並行して進んでいく。
人は空気を吸うだけでは生きていけないのだ。


多くの問題を孕んだ案件だと、ジミンは今更ながらに思う。
だけど、何だか力が湧いてくるのを感じるのだ。
ユニの強いまなざしが、ジミンの体温を上げる。


「何だか・・・向かい風へと歩いていく人ばかり。
皇后様、ユニさん、それに私か。
何よ、もう。
面倒くさい人ばかりじゃないのよっ!」

ジミンは可笑しくなって、誰もいない公園で思わず叫んだ。





 
        皆さまへ。

      残暑、お見舞い申し上げます。
      
      天候不順な今年の夏、いかがお過ごしでしょうか?
      大雨の被害、大丈夫でしたか?

      ずいぶんとお休みしております。
      しました・・・じゃないのは、まだ途中だからなの。
      家庭都合でなかなか時間が取れなくて
      今日は久々に遅くまで頑張ってみました。

      お休み中のご訪問や拍手をありがとうございます。
      皆さまが過去のお話を読んで下さっているのが
      よーくわかっております。
      本当にありがとーーー♪

      しばらくは書ける時に書くというパターンですが
      超ノロノロになると思います。
      過去のお話は増える訳ではないので
      申し訳ないかぎりでございますが・・・

      今回のお話に出てきたコ・ユンソン氏は実在の人物です。
      彼の事を扱った記事をかなり参考にさせていただき
      無断で転記もしております。
      関係者の方々、申し訳ございません。
      不都合な点がありましたら、削除させていただきますが
      題材として真摯に向き合っておりますので
      お見逃しいただけたら幸いです。
      なんて書いてみましたが、
      関係者の方は絶対にこのブログ見ていないと思います。(笑)

      久しぶりに書いて、やっぱ楽しかったわ。
      皆さん、またお会いしましょうね。

      お元気で!
      あんにょーーーん♥


                    Luna






暑中お見舞い申し上げます♪
皆さま、こんにちは。
本日もご訪問をありがとうございます♪

大変ご無沙汰しております。
元気にお過ごしでしょうか?

道路を隔てた向かいの小学校からセミの大合唱が聞こえてきます。
もうそんな季節なのだと、改めて感じた今朝。
名古屋はあいにくの曇り空ではありますが。

構想は頭の中で沸々とわいているのに、文字に出来ないもどかしさを
只今、嫌と言うほど味わっております。
年寄り3人の夏風邪、妊娠8ヵ月の娘の救急搬送。
滞っていたリフォーム再開と、繁忙期に突入中の仕事。
ここに来て、自分が3人くらい居て欲しい日々を送っています。

どうしようかという選択肢もない今、ここはお休みするしかないと
きっぱり決断しました。
ちゃんとしたものをお届けしたいなんていう、大義名分どころではなく
正直、毎日の時間が足りません。

お盆の帰省から戻ってきて、体調を整えた頃
チェギョンを迎えに行けたらいいな~と思っております。

新しいお話がないのに、日々訪問して下さる皆さま。
過去の記事に一つ一つ拍手をして下さる皆さま。
お気持ちは有り難くいただいております。

今度は残暑お見舞いになると思いますが、
必ず元気に戻って来ますので またお会いしましょうね。

今年の夏風邪はとても厄介です。
感染力が強くて 発熱、鼻水、咳がなかなか止まらない。
どうかお気をつけ下さいね。

こんなご挨拶でごめんなさい。
今度会える時まで、ごきげんよう!!

あんにょーーーん♥


        Luna





進め! 39
公務を終えたチェギョンを大勢の記者達が囲む。
車に乗り込む前に、皆一言でも話を聞きたいのだ。

ユ尚宮とイギサがしっかりガードしていて、記者達はなかなか近付けない。

「皇后様、ハナ様はお元気ですか?」

「お誕生日以来、ご様子を拝見できませんが
もうお話などされるようになられましたか?」

「皇后様、久しぶりにハナ様の可愛い笑顔を拝見したいです。」

始めてのお誕生日に、宮はハナの韓服姿の写真を公開した。
宮内を歩き回る様子や、両親と遊ぶ姿も動画で公開し
国民達はその可愛らしさに熱狂。
あまりの関心の高さに、宮はむしろ慎重になり
ハナの露出を控えるようにしたのだ。

記者達の質問に応えようと、チェギョンはユ尚宮とイギサを制しふり向いた。

「ご心配をありがとうございます。
ハナはすごぶる元気です。
宮内を走り回り、ついて歩く私達が疲れてしまうほどです。
近いうちに、宮の広報よりお知らせができますよう計らいますので
お待ち下さいね。」

チェギョンの肉声も久しぶりだった。
最近では少し離れた場所から、にこやかに手を振って応えるのが常で
以前のように記者達との楽しい問答が減っている。
それは妃宮時代の気楽さと、皇后になった今の違い。
一つの言葉も重い意味を持つ立場に、慎重にならざるを得ないのは承知だ。
だが、国民達はチェギョン妃の天真爛漫な姿が見たいのだ。
時々軌道を外れて、庶民のところにやって来てくれるお妃様が好きなのだ。
いくつになっても可愛い笑顔は健在だけど、皆は少し淋しかった。

「楽しみにお待ちいたしますね。」

「皇后様、もう一言お願いできますか?」

「皇后様~。」

記者達の声は、チェギョンに重なる様にガードするイギサ達によってかき消された。






それから3週間が過ぎた。

ジノからもジミンからも、全く連絡は入ってこない。
そんなに容易く事が運ぶとは思っていないけれど、
無しのつぶてという事は、相当難航しているとみていいだろう。

それにしても・・・とチェギョンは少し不服そうに頬を膨らませる。
ジミンからメールの一つくらいあってもいいのでは?
それぞれの仕事が忙しいのは重々わかっているけど
なーんにも進展していないのだろうか?

遊び疲れたハナが昼寝をする傍らで、
チェギョンは目にも止まらぬ速さでメールを打つ。

「返事を待ってるわよ、ジミン。」

そう言って話しかけるのは古い携帯電話。
以前ジェヨンに番号の漏洩を指摘されて、新しいものに変更した。
だが、これはこっそり持っている。
オ尚宮によって東宮で幽閉された時に大活躍したいわくつきの電話。
今となっては、シンとジョンミンしか知らない番号だが
最近新たにジミン、ジノが加わった。
持ち続けるには無理がある機種だが
チェギョンは捨てられない。
今でもこっそりと、自腹で料金を支払っている。
宮の経理課では公然の秘密だ。





「ゲッ、催促のメールだわ。」

ジミンは見なかった事にしたい。
この3週間、持っている仕事も忙しく 文字通りキリキリ舞いだった。
かと言って、ユニの事を放り出していたわけではない。
施設に潜り込むのは、もう無理だから
彼女の帰りを狙って何度か待ち伏せを試みた。
だが、彼女は同僚と一緒に住んでいるらしく
帰宅中に一人になる事がない。

思い切って声をかけようとしたのだが
もし失敗したら、もう成す術がない。
躊躇っているうちに、すぐ近くにある小さなマンションに
彼女は消えてしまうのだ。


ジミンはメールを返した。

  『明日、彼女の帰宅時に必ずトライします。』

それはチェギョンに向けてよりも、自分に言い聞かせるためだ。

あの時、妃宮だったチェギョンは 確かにジミンを理解してくれた。
皇太弟に向って「謝る様に」と言ってくれた。

女子刑務所にいる間、ずっと考えた事の一つ。

女性が同じ女性を落としめて、どうすんだ!
男社会で生き抜くのに、女性であることのハンディはまだまだ多い。
女性が女性を守り合う事も必要ではないか。
前に進むのを躊躇っている人の背中を、ほんの少しでも押してあげられたら・・・

だから、猛勉強して記者になった。
もちろんジノの尽力があっての事だが、
お嬢様だったジミン、前科がついてしまったジミンは本当に頑張ったのだ。


「アジャ、ファイティン!!」

気合いを入れて、ジミンは右手を高く空に突き出した。






進め! 38
「何でチェギョンはそういうややこしい事を拾ってくるんだろうね。」

執務室で忙しそうに書類をめくるシンを眺めながら、ユルが言った。

「それはたぶん・・・いや、確実に 僕達よりちゃんと世間を見ているからだ。」

「公務の時も鼻を利かせて?」

「ああ。」

「でも、その女性記者っていうのは大丈夫なの?
本当に信頼できる人物なのだろうか?」

ユルは心配そうに眉をひそめる。

「大丈夫だろう。
ジノの弟子みたいな存在らしいから、滅多な事は無いと思うが。」

シンは全然心配していないようだ。

「ジノは信頼が厚いんだね。
でもね、用心した方がいい。
今でも宮の第二皇子を皇帝にしたくて、君達を油断させているかも?」

「はん! バカバカしい。」

「チェギョンのお人よしが移ったかな?
皇帝なんだから、もっと慎重にならないと。
それにチェギョンはそんな事に首を突っ込んでいる場合じゃないと思うけどね。
まだ本調子じゃないんだから。」

「だからだ。
同じマスメディアに関わる人達に接することで、彼らと信頼関係が築けたら
むしろ快方に向かっていくのではないかと思うんだ。
皆チェギョンが憎くて記事を書いているわけじゃない。
興味があるから、話題にしたいから書く。
その辺りをチェギョンが割り切っていけたら、ずいぶん楽になると思う。」

「ふうん、なるほどね。
シンはそうやって気持ちを切り替えてきたってわけか。
長年苦労してきたからこその意見だ。
だけど、その女性記者が気になるな~。」

「何だよ、美人がどうかってか?」

「それもあるけどね。」

「どうした、どうした。
彼女と上手くいっていないのか?」

「いや、すこぶる順調ですよ。
仕事を覚えるのが大変で、時々約束をすっぽかされるけど。」

「ははは・・・
道理で機嫌が悪いと思った。
慣れない環境でいっぱいいっぱいなのだろう。
ユルはちゃんと理解してやれるはずだ。
18歳のチェギョンを優しく包み込んであげてた。」

「昔の事を蒸し返すなよ~。」

「いや、反省しているんだ。
ずっと宮で育って、一般人よりも身に付けた事は多かったかもしれないが
肝心の心が成長していなかった。
今だってそうだ。
目に見える重要な案件に関わって、忙しく仕事をしているけれど
実はもっと大変な事が他にあるような気がしてならない。
チェギョンが気になるのは、たった一人の脱北者かもしれないが
韓国中を見渡せば、そういう人達がたくさん居る。
今回の件で、世間がもっと現実に向き合ってくれたら
少しは前に進めるのではないのかな・・・
もちろん、韓国は大学新卒者が就職するのも困難な現状だ。
難しい問題をはらんでいる事は重々承知の上なのだが。」

「そうだね、確かに。
宮が関わってはいけない問題だけど、
遠くから池にポチャンと一石を投じるくらいはできるかもしれない。」

「もうしばらく、黙って見守ってやろう。
ジノが付いているんだ。
チェギョンの暴走はないだろう。」

「うん。」



執務室のドアをパタンと締めて、ユルは自分の殿閣へと向かう。
廊下でふとふり向くと、チェギョンが慌しく出かけて行くのが見えた。
若草色のワンピースがヒラヒラと揺れる。
チェ尚宮から渡された白いバッグにも同色のリボンモチーフ。
つばの広い白い帽子に、足元にも真っ白なパンプス。
初夏の装い、チェギョンらしいチョイスだ。

公務と子育ての両立は、はたから見ていても大変そうだ。
今日もギリギリまでハナの傍に居て、この状況になっているのだろう。

    こんな状態なのに、チェギョンはいつの間に
    その女性記者と親しくなったのだろう?

ユルはさっきからジノと女性記者が気になっていた。
ジノは皇帝夫妻から厚い信頼を受けている。
シンとチェギョンを排除して、ユルを皇帝に据えようとした男。
ファヨンからトカゲのしっぽのように切り捨てられ
殿閣焼失事件で、やっと己の間違いに気付いた男。
それからは陰になり日向になり、宮を援護しつづけている。

    僕が言うのも変だけど、シンもチェギョンも
    ジノを信頼しすぎていないか?

年老いたソ元尚宮が愛読していた、ジノがボツにした記事達。
そこには宮愛が溢れていた。
特にチェギョンを守ろうとする彼の思いがしっかりと確信できた。
だけど、ファヨンと組んでシンをつぶそうとした彼は凄味があった。
それを目の当たりにしていたユルは、
シンやチェギョンのように心からの信頼はおけずにいる。

     そんな事を言ったら、僕も同じなんだけどな。
     
あっという間にチェギョンの姿は見えなくなっていた。

     行ってらっしゃい。
     今日もみんなにたくさんの笑顔と愛を・・・

ユルはくるりと前を向き、自分のすべきことをするために歩き出した。